株式会社いないいないばぁ

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2017-02-22

【温泉地に学ぶマーケティング術】地域ブランディングでお客さんを呼び戻した方法とは?


近年急激に増え続ける外国人観光客。

2020年の東京オリンピック開催を控え、更なる宿泊施設の不足が叫ばれる一方で
地方や小都市の宿の多くが廃業スレスレの苦境に立たされている現状です。

そんな苦しい地方の宿にして、ここ15年で地域全体を見事活性化させ、復興させた人がいます。

その人とは、約800年続く兵庫県有馬温泉の老舗旅館「陶泉 御所坊」15代目金井啓修(ひろのぶ)さん。

彼の生み出す目から鱗のアイディアと斬新なマーケティング術で、有馬温泉は今や年間170万人もが訪れる人気急上昇スポットに。

観光庁から「観光カリスマ」に選定される程の金井さんが起こした、劇的な大成功策とは一体どのようなものだったのでしょう?

日本の名泉を襲った、観光客激減の悲劇

(flickr / 克年 三沢)

神戸市北区、有馬にある、日本で最も古い温泉地の一つが「有馬温泉」です。

日本三古湯の一つで、あの日本書紀にも記述があり、豊臣秀吉も愛したとされる日本を代表する人気温泉地です。

しかし、阪神淡路大震災と不景気に煽られ、観光客数が激減。

1991年には観光客数が192万人と過去最高を記録したにも関わらず、1995年には90万人減の102万人にまで低迷しまったんです。
(ちなみに山梨県の全人口が86万人、東京世田谷区の人口が90万人)

たった4年間で、これだけの打撃を受けました。

この状況を受け、金井さんは奮起します。
「わざわざ人に来てもらうんだから1泊2食で温泉、以外の+αの価値を提供しなければ。」

そう決意し、ここから金井さんの意表をつく独自の快進撃が始まります。

あえて小さくすることで、売上が3倍に

(flickr / Tzuhsun Hsu)

時はバブル期。
有馬の他の旅館はどんどん規模を拡大して大型旅館化していきました。

その一方で、金井さんが手掛ける旅館「御所坊」は、あえてコンパクト化します。

元々30室あった部屋を、20室に減らす。
団体客用の宴会場も潰して、個人客用のお部屋に改装し、客単価UPを狙いました。

また、細かいデザインや小物に拘り、“谷崎潤一郎“や”伊藤博文“のように、部屋それぞれを有名人をテーマにデザインするなど、歴史・文化を好む人をターゲットに。

「まるで、昭和初期の文豪が泊まった部屋みたい!」

と、個性あふれるこの宿はたちまち話題となり、改装前に比べて売り上げは3倍もUPしました。

金井氏はとある番組で
「なぜ大型旅館の全盛期に個人客へ狙いを変えたのか?」

という質問に、こう答えています。

他と同じように鉄筋に建て替えたら、人よりも努力して集客しないといけない。
それが嫌だから、今ある古い木造3階建ては二度と造れないので、自分が女の子を誘って泊まりに行く時に、「かっこいい」と思える旅館を造れば、
きっと同じような感覚の人もいると思った。 

ということで、宴会場があると、カラオケも次々と買い替えなければならない。
それなら大広間はいらない。

 個人客に特化しようと考えた。そうすれば競争相手もいない。

こだわるのは、「ストーリー」

(flickr / Atomark)

客室それぞれにテーマ付けをするのは、そのテーマが好きな個人客に特化するためだけではなく、独自のストーリーをもたせることで文化を掘り起こし、発信するため。

伊藤博文が度々泊まった「御所坊」だから、彼が好んだ牛肉を自慢料理にしよう、と名物料理をすき焼きに。

「御所坊」と言えばすき焼き、という文化を魅力の一つにしました。

このアイディアは「御所坊」を通り越して、町おこしにも活用されています。

例えば・・・

有馬温泉は実はサイダーの発祥地なのですが、そこに目をつけ開発したのが「有馬サイダー」
今では年間30万本も売れる、大ヒット商品に。

また、有馬温泉のある神戸市には元々からくり人形職人が沢山いたことに価値を見出し、「有馬玩具博物館」を設立。
子供は勿論大人も楽しめる施設になりました。

こじつけではなく、
あらゆる要素からストーリーを見つけ出して文化として発信しているのです。

そして、金井さんが手がけているのは「御所坊」だけではありません。
有馬温泉全体を盛り上げようと、有馬温泉街にある16店舗以上ものお店をアシストしています。

その結果、有馬温泉の地域全体にプラス効果が生まれ、それゆえライバル旅館の支配人たちも、

彼は自分の御所坊だけを売り出すわけではなく、有馬温泉をどうするかを考えている。私欲だけじゃないのが彼のすばらしいところ

と金井さんを認めています。
ライバルから一目置かれるのは、そう簡単ではありませんよね。

自分の好きなものを作る。

(flickr / neverbutterfly)

金井さんは言います。

結局「自分が泊まりたい宿をつくる」と「自分が住みたい街をつくる」のは一緒。

その思いを実現するべく、色んな施策を打ち出します。

温泉は男湯と女湯が別れているので、家族で入浴中にコミュニケーションが取れない。
それを解消するため、それぞれの湯の仕切りを竹一本にして会話ができるような仕組みにしたり

外湯めぐりや日帰り温泉をより楽しめるようにと、唯一の外湯だった「温泉会館」を建て替えて”足湯”を設置。

地域の店が繁盛し、結果として全体が潤うようにと飲食スペースはあえて設けず、観光客が周辺のお店へ足を運ぶように仕掛けました。

温泉宿というのは本来、宿内に売店やレストラン等を設置して、お客さんを外に出さない仕組みが取られていましたが、金井さんの考えは真逆です。

「それでは地域全体の活性にはつながらない」

そう考えて「食べ歩き」の充実に取り組み、

・竹中肉店のコロッケ
・汸臼庵の棒天ぷら
・湯の花堂の炭酸チョコせんべい

など、街には美味しそうな食べ歩きのお店がたくさん。
観光客がぶらり歩きをする街になっていきました。

食べ歩きに加え、有馬の狭い路地歩きも楽しめないか?

その思いから、「路地裏アートプロジェクト」もスタート。

国内外10名のアーティストの作品を展示して、目立たなかった路地裏を、楽しいアートの場へ変えていったんです。

「自分の好きな街づくりへ」

というその思いを軸に、新しいアイディアがどんどん形になり、有馬温泉全体を益々魅力的にしています。

まとめ

―これはアイディアマンの金井氏だからできること

そうでしょうか?

有馬温泉を訪れる観光客数は、20年前のなんと1.7倍。
今なおその数は増え続けています。

・独自の魅力を磨いてターゲットを個人客化
・客室にも街全体にもストーリー性をもたせて文化を発掘・発信
・自分が好きなもの、楽しみたいもので溢れた街づくり

いかがでしたでしょうか?

金井さんのマーケティング術やアイデアには、観光業以外においても活用できる集客マーケティングの要素がたくさん散りばめられているはずです。

是非この有馬温泉の成功エッセンスを取り入れてみてください。

  

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