あなたは、甘いものが好きですか?
ホッとひと息つきたいとき、甘いものを食べると幸せを感じますよね。
例えば、
子どもにも大人気の「コアラのマーチ」、もらってうれしい博多土産の「通りもん」、アイスの定番「雪見だいふく」。
この3つ。
実は、すべて同じ機械で作られているって知っていました?
お菓子と和菓子、そしてアイス。
全然違う食べ物ですが、一つだけ共通している所があります。
それは、「包んでいる」ということです。
コアラのマーチはクッキー生地がチョコを包んでいます。
通りもんは生地で餡を包んでいます。
雪見だいふくはお餅でアイスクリームを包んでいます。
この「包む」という作業。
実は、想像する以上に難しい作業です。
通りもんは餡が柔らかすぎて、人の手では包むことができません。
雪見だいふくも冷たいアイスクリームを人の手で包むのも難しい。
それを可能にしたのが、「レオン自動機株式会社」が作る「包あん機」。
なんと、国内シェア9割。
日本中の食品会社が頼りにする「包あん機」で、年商230億を叩き出すレオン自動機株式会社の秘密に迫りたいと思います。
一台、約700万円する機械が売れる
例えば、豆大福を作るとき。
和菓子職人が、生地に餡をのせ、生地を伸ばしながら餡を入れ込みます。
そして、包み込んだら、その跡が見えないように仕上げます。
この一見簡単なように見える作業の中でも、途中で生地が破れないよう、餡が真ん中にくるように包むには、熟練した技術が必要なのです。
そもそも、和菓子業界は深刻な人手不足。
さらに一人前の和菓子職人になるには、10年以上の修業期間が必要とも言われています。
そして「包む」作業も時間がかかる、延々と単純作業を続けるだけの、とても地味な作業です。
そこで、レオン自動機株式会社の創始者である林虎彦氏は
「機械のように包むだけなら、包む機械を作ってしまえばいい」
「職人を単純作業から解放したい」
そんな強い思いをもって「包む」ことができる機械を世界で初めて完成させました。
実際、1963年に包あん機が出来上がるとお菓子業界では「革命」と言われ、今まで単純作業を強いられてきた和菓子屋さんが、次々と包あん機を導入。
一台、約700万円する機械。
1日に数万個の饅頭を自動的に作れることで、お店は安定した売り上げを確保でき、職人の貴重な時間を単純作業に費やさなくて済むようになりました。
10年の歳月をかけてつく作り出した機械
この「包あん機」を完成させるまでの道のりは、とても険しいものでした。
最初の挑戦ではお店の売り上げを開発に全部つぎ込み、お店を倒産させてしまいます。
夜逃げ同然で、たどり着いた先は鬼怒川。
そこで、もともと和菓子職人としての腕が良かった林虎彦氏は、人気和菓子「きぬの清流」を生み出します。
今でも鬼怒川の銘菓人気No.1として、愛される和菓子です。
ヒット商品を生み出し開発資金を得た林氏は、鬼怒川から東京の国会図書館に通い、流動学を学びます。
流動学とは、ゴムや粘土などドロドロした物体を機械で処理するための工業用の学問。
それを饅頭作りに応用したのです。
そして、機械を作る鍛治職人の兄弟をパートナーに迎え、なんと10年の歳月をかけて世界で始めての「包あん機」を完成させます。
この「包あん機」を使用して作られるパンやお菓子を見て、物質の変形および流動一般に関する学問分野である「レオロジー=流動学」から社名をとり「レオン」と名付けたそうです。
主力商品「火星人」の誕生
現社長の田代氏は、元々は開発部に所属する、創始者林氏の愛弟子です。
田代氏は、包あん機をもっと効率のいい機械にできないか、と試行錯誤した結果、「シャッター」を開発します。
シャッターとは、包あん機の生地と餡を絞り込んで切り離すことができるパーツのことです。
このシャッターのついた「包あん機」は、「火星人」と呼ばれる機械として、レオン自動機の主力商品となっています。
このシャッターのおかげで、従来の機械では扱えなかった材料が使えるようになりました。
例えば、ひき肉とチーズを機械にセットすることで、ファミレスで人気商品である「チーズインハンバーグ」が出来るようになりました。
シャッターの種類はたくさんあり、オプションで後付けすることで、いちご大福や肉まんなども作ることが出来るようになりました。
肉まんで有名な井村屋の工場では、レオン自動機の12台の包あん機がフル稼働。
機械を使って、人の手で包んだように見せる技術で生地を加工し、高級肉まんとして売りだしています。
シャッターを導入したことで効率が上がり、今まで包めないものまで対応できるようになったのです。
海外からの視察が年間200件
世界には包んで作る食品がたくさんあります。
中国には有名なお菓子、月餅。
英国にはゆで卵をひき肉で包んだスコッチエッグ。
ロシアはピロシキ。
日本にとどまらず、世界中の包んで作る食品を支えている「火星人」。
今では、海外からの視察は年200件を超え、海外での売り上げは会社全体の売り上げの40%を占めるようになりました。
「今まで手作りしかなくて衰退していくものを機械化して守っていく」
「食文化に貢献していく会社であり、食文化が発展すれば経済も発展する」
社長の田代氏は言います。
さらにはアジアにも包んで作る食品が多く存在しているので、「火星人」を必要とするマーケットがある。
これからは、アジアにも売り込んでいきたい、とも言います。
提案とアフターサービスで顧客の心をつかむ
レオンは売るだけでは終わりません。
国内外からお客さんが視察に来る際、相手が扱う商品に合わせて機会を改良して提案を行っています。
例えば、バン作り職人がクロワッサンを作る際に、望んでいる大きさにカットできる機械を考案し提案する。
このような相手と徹底的に向き合う対応は、相手が商品を買か買わないかに関係なく行われています。
他にも、レオン自動機は、毎月、取引先や和菓子職人に向けて講習会を開いています。
購入してもらった「火星人」とオプション器具の使い方を説明し、「火星人」を使って次なるヒット作を生み出し売り上げを出してもらえるように新作のレシピも公開しています。
手厚いアフターサービスにより、「火星人」を購入してくださったお客さんとの信頼関係をさらに深めているのです。
まとめ
レオン自動機は、職人を単純作業から解放し、さらなる開発で商品の幅を広げ、世界の食卓を支える機械を作る会社です。
独自の包むことに特化した機械で売り上げを伸ばしています。
売上の4割を占める海外から視察は、年間200組。
どんな顧客とも徹底的に向き合い、提案をしながら商品を知ってもらう対応と、購入後も顧客に商品提案をおこなうことで、信頼関係を深めながら新たな商品を購入につなげています。
機械の性能はもちろんのこと、ビフォアーサービスからアフターサービスまで相手に徹底的に寄り添うことで評価されてきた、レオン自動機。
あなたの周りにも、気が付いていない凄い会社があるかも知れませんよ。
参考になれば幸いです。