株式会社いないいないばぁ

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2017-03-08

縮小する日本酒業界で売上200%達成 八海山4つの独自戦略


近年の日本酒業界は低迷中。

1995年には132万kLあった出荷量は、今や56万kL。
市場は20年前の1/2に縮小しています。

そんな中、

右肩上がりに業績をあげつづける企業があります。

1980年代地酒ブーム牽引した銘酒、八海山を製造する「八海醸造」です。

八海醸造の売り上げは、1995年の43億円から2015年には92億円に。
20年で売り上げが2倍以上になっています。

縮小する日本酒業界の中でなぜこんなに躍進を続けるのか?

今日は、八海醸造の独自戦略のご紹介します。

独自性をだす2つのポイント

「どんな食事にでも合わせられる」個性

日本酒好きな人がお酒を飲むとき、料理がメインでなく、“つまみ”と一緒に日本酒の味を楽しむことが多い。

というのも、いまは個性を主張するお酒が全盛期。

各所の地酒は、個性的を求めるようにさまざまな工夫を凝らしているのです。

そんな日本酒の味の差別化を図る方法の1つとして、精米(米を磨く)の割合を変える方法があります。

たとえば、今一番人気の山口県の「獺祭(だっさい)」。
精米を極限の2割まで行うのが特徴で、これにより他とはちがうワインのように洗練された味わいをだしています。

一方、八海山は、精米具合6割程度。
八海醸造がめざすのは、お酒の個性を前面に出すのではなく、どんな料理にでも合うお酒。

「どんな食事でも合う」
「ついつい飲んでしまう」

とお客さんに思ってもらう。
どんな食事とも相性がよく、食事を引き立たせるためのお酒。
つまり「食中酒」を目指しています。

特別な時だけでなく、日常的に飲まれるお酒として、飲む機会が増える。
多くのお店に取り扱ってもらえる。

こうして八海山は、多くの場面で、たくさんの人に愛飲されるお酒になっていったのです。

機械を導入して効率化を目指す

そんな「食卓に自然にある」を目指す八海山でしたが、1980年代の地酒ブームの際には思わぬ高騰が起こりました。

地酒ブームにより、人気酒であった「八海山」は手に入りにくいものに。
店頭では、通常の2倍以上の値段で売られており、いつも愛飲してくれている人の手に届かないお酒となっていきました。

そんな状況を知った八海醸造の3代目南雲氏は、八海山の大量生産のために機械導入を決意します。

これが、八海山の2つめの強み。

今まで全て職人が行っていた作業のうち、機械化させた方が効率が上がるものを、人から機械へ変更しました。

例えば、米に水を吸わせる作業。
米の産地や季節により水の吸収が異なるので、ムラが出やすい工程です。
しかし、機械導入をしたことで効率が上がり、ムラを防ぐことができました。

一方で、味の決め手となる麹つくりは熟練した職人が手作業で行っています。

八海山は年間数百万本を売り上げるブランド。

日本酒を数百万売るブランドの場合、麹つくりを手作業で行うことは困難です。
しかし、八海山は機械化できるところと手作業となるところを分けたことと、機械導入により浮いたコストで手作業で対応するところには力をいれたことが可能となりました。
そして、大量生産でも味を落とさないことに成功しました。

機械と職人が融合した新しい工場でできる日本酒は年間250万本。
こうして八海山は、手に入りにくい日本酒ではなく、日常「買える」「手に入る」身近な日本酒となることに成功しました。

可能性を最大化する2つのポイント

売上げ2割を占める日本酒以外の商品

八海酒造は、日本酒づくりの技術力を他の商品にも生かしています。
麹を扱うノウハウは、しょうゆ、塩麴、あまざけにも応用がききます。

たとえば、「麹だけでつくったあまさけ800円」。
これが、店舗でも入荷待ちが続出しているほど売れています。

他社の甘酒と大きく違うところは、酒を造った後の麴からではなく、酒を造る前の米麹を使っているところ。

そうすることで、砂糖をつかわない自然な甘みが生み出されています。
現在では生産が追い付かないため、2017年の6月には甘酒専用の工場が建設される予定だそうです。

ここまであまさけが売れたのは、麹の甘みをコントロールできる日本酒造りの技術力のたまものです。

他にも、東京日本橋には店舗「八海山千年こうじや」を構え、このような八海山の麹・発酵技術をいかした製品を並べています。

しょうゆ、塩麴だれ、あまさけのほかにも、それらを利用したスイーツや総菜も。
1番人気は、麹を使用したことで、肉が柔らかく旨味が増した「塩麴漬けもちぶた」です。

このように酒作りで培った技術を生かした、清酒以外の発酵製品を提案することで、新しい顧客を開拓と会社の強みに変えており、今では売上の2割を支えています。

年間150回行われるセミナー

お客さんにより商品を近くに感じてもらうため、「八海山千年こうじや」で売られている商品を使ったセミナーも開催しています。

なんと、東京で年150回。

・塩麴をまぜこんでオムレツ
・甘酒をつかったさわらのてりやき
・甘酒じたてのスイートポテト

八海山の商品「塩こうじ」、「あまさけ」を使って、カンタンでおいしいメニューを学ぶことができる。

料理教室では、八海山がふるまわれ、お酒に合う料理も習えるので、お酒好きな人にはもちろん、日本酒が苦手な女性たちも八海醸造の商品を身近に感じることができ、リピーターが続出している。

こうして八海醸造は、食卓とより密着することで、日本酒だけでないファンの獲得に成功しています。

まとめ

八海醸造は、

・どんな食事にでも合う日本酒を目指す
・機械を導入し、日本酒を造る技術はそのままで価格を抑える

ことに成功。
さらに、製造技術をいかした「麹だけでつくったあまさけ」や、日本酒をいかしたスイーツ、調味料、総菜の販売、レシピの提案、料理教室の開催など、清酒メーカーであるという枠にとらわれない提案をおこなっています。

この、「独自性を守りつつ枠にはまらない姿勢」が八海酒造の好業績の秘密です。

自分のビジネスの独自性はどこなのか、そしてそこからなにができるのか考えてみてもいいかもしれませんね。

  

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